【file.3】30代、男性、焼き鳥屋店主の場合。~人生の楽しみ方編~ 

前島秀寿

30代、男性、焼き鳥屋店主の場合  ~人生の楽しみ方編~ 

 

編  経営してる焼き鳥屋の方はどうですか?今何年目でしたっけ。

 

前島 丸2年ですね。オープンが12月25日、クリスマスでしたから。

 

  ものすごく順調に来たんじゃないですか?

 

前島 こんな順調にいきすぎていいのかなっていうぐらい笑。

 

編  まずいなっていう時期は特になかったでしょう?

 

前島 最初の3ヶ月間ですね。売上が全然ついてこなくて。 2015年の12月25日にオープンしたんですけれども、年末なのでお客さんもどんどん地元に帰ったりする時期だったし、最初の3日間はビール半額のキャンペーンとかをしたのでお客さんが入ったんだけどそれ以降全く入んなくなって。

 

編  そもそも何で年末にオープンしたんですか?

 

前島 工事から何から全部自分たちで用意したので思いのほか時間がかかったのと、そもそも2015年の時は年内になんとかオープンしたいという目標があったので結局その日になりました。別にクリスマスは狙ってないです笑。

 

編  絶対狙ったんだろうなと思ってました、狙う理由は謎でしたけど。

 

前島 ホント偶然です。

 

編  準備にはどれぐらい結局かかったんですか?

 

前島 2ヶ月半かかってます。お金の節約のために自分たちで工事をやるって言うのは最初から決めていたので。

 

編  借金せずに全部資金が準備できてから店をスタートしたんですよね。

前島秀寿

床も壁も配線も自分たちで。

前島 そうです。

 

編  資金を貯めるのにどれぐらいかかりました?

 

前島 4年ぐらいはかかっていますね。店は今兄貴と二人で経営してるんですけれども、初期のお金も2人で貯めたお金から出すという話にしていたので貯めていた頃は毎月、今月は俺が何万円、兄貴が何万円という風に表を作って入れていって、今月は兄貴が多めにいれたから来月は俺が多めに入れようとかそういった形で。

 

編  2人で決まった額を入れてるということですか?

 

前島 額は特に決めてたわけじゃないんですけれどもその表を見ながら、「最近ちょっと入れてる額が少ないな」とか自分で思えば、翌月は生活をかなり切り詰めて多めに入れてとかそういう感じです。

 

編  なるほど。その間に焼き鳥の焼き方などの修行もしていったんでしたっけ。

 

前島 そうですそうです。

 

編  当時マンションのベランダで焼き鳥焼いてましたよね。

 

前島 はい、七輪で笑。

 

編  そもそもなぜ焼き鳥屋なんですか?

 

前島 実は焼き鳥屋がやりたいとかそういう前に、まずどうやってお金を稼げるかと言う課題からスタートしていて、その時は焼き鳥屋というより飲食店をすることさえ決めてなかったです。

 

編  言ってしまえばお金が稼げればなんでもよかったんですね。

 

前島 そうです、目的がお金を稼ぐことでしたから。それで兄貴と最初はなにしようかという話になって候補に出たのが引っ越し屋だったんですけれども。いろいろ情報を仕入れて。まず、1日3件回ったら結構儲けられるらしいぞっていう情報とか、飲食店に比べたら初期費用が少なくて済むといった、そういう面から引っ越ししようかっていう話になりました。でも年齢がいったら相当辛いですからね。

 

  たまに50歳を超えても現役バリバリでやってる人もいますけどね。

 

前島 いることにはいるんですけどね。でもやっぱり怪我したら終わりだしちょっとそれをやってくのは厳しいなぁってなって。じゃあ何やろうかとなった時に飲食店が候補に入って、それだったら焼き鳥ということになりました。

 

編  なるほど。

 

前島 そこからもう自分たちで「焼き鳥のバイブル」と呼ばれているような有名な本を読んで研究したり、インターネットも使って色んな情報をかき集めてというのを何年もやりました。

 

   では結構いろんなものを参考にしてるって事ですか?

 

前島 そうですね、でも例えばそのバイブルって言われてる本なんかはいろんなことが書いてあるんですけれども、自分たちでまずはその通りやってみて本当に美味しいか確認して、イマイチだったらそれはどんどん改良して、あんまり本の通りにやることにこだわったりはしてません。

でも調べた情報の中でも、飲食店出す場所は急行が止まらない駅が最寄りで、外から店内は丸見えで、あとは駅に近い、これぐらいは絶対守らないといけない条件だというのはそのまま大事にしましたけどね。

前島秀寿

焼き鳥「鳥テル」店主 前島秀寿さん

編  修行経験もなく自分たちで店を出していきなり成功したように見られると思いますけど、実際かなり質の高い修行をしてますね、それ。

話をきいていると、そういったトライアンドエラーみたいなことを地でやったり、そもそも計画どおりに物事をすすめていくみたいな能力の源というか体質が昔からだったのか、少し焼き鳥屋を構想する前の、東京にきたあたりの話を聞いていいですかね。

 

前島 いいですよ。出身は奄美大島なんですけど、まず高校を卒業してから東京に出てきました。

 

編  その時はなんの目的でした?

 

前島 まぁ・・・当時は音楽をやってましたので夢を見て東京に、ですね笑。

 

編  そこからはずっと東京ですか?

 

前島 いえ、その後は1回大阪です。

 

編  それはまたなんで?

 

前島 女を追っかけていきました笑。

 

編  どちらもよくある話ではありますね。

 

前島 当時は地元の女の子と付き合ってたんですけれども、その女の子は僕とは違って東京ではなく大阪に出て行ってしまったので、8ヵ月間遠距離で恋愛をしてその間僕は東京でパチンコ屋のアルバイトをやってお金を稼いで、結局大阪に行くことになります。

 

編   いろいろあったんだと思いますが、地元が同じで付き合っていた女の子が大阪に行ったのになんで前島さんは東京に行ったんですか?しかもその後結局大阪に行くのに。

 

前島 何て言うんでしょう、なんか、音楽といえば東京じゃないですか。それだけです笑。

 

編  まぁたしかに。なんか納得できました。では最初に東京に来たときはその数ヶ月間で一旦離れるわけですね。

 

前島 そうです。まぁ当時の彼女を追いかけてと言いましたけど実際大阪にはその子以外にも地元が同じ友達も多かったので、東京には行ってみたものの大阪に行くことになったというほうが正しいですね。

 

編  大阪にはどれぐらい住んだんですか?

 

前島 2年ぐらいですね。

 

編  で、その大阪の彼女は結局そこで駄目になっちゃうんですか。

 

前島 そうです。それで当時は持っていた15万円だけを片手に東京に再度向かうことにしました。

 

編   大阪に2年住んだということは当時ハタチぐらいでしょうから、その後はずっと東京にいるってことですか、結構長いですね。

 

前島 そうなんです実は結構長いんですよ。

 

編  ではそこから先ほどの焼き鳥屋の構想がたつまではアルバイトか何かをして生活していたということですか?

 

前島 そうです。まぁ、音楽をやりながらでしたね。

 

編  そういえば音楽を作ってたんですよね。もともとそういう、曲を作ることがやりたいということで東京に来てるんですか?

 

前島 本当に最初の頃から話せば、最初はギターリストです。でもどんどんやっていくうちにギターは音楽のただの一部でしかないので、音楽というものを作るんだったらギターだけじゃダメだなと思いいろんな楽器の各パートを理解できるように勉強していきました。そうしていくうちに機材とかを使って曲が作れるようになって楽曲を提供したりはしていましたね。

 

編  知り合いとかほぼ何もない状態で東京に来て自分で音楽の活動して、楽曲を提供するまでになるって傍から聞いているとすごいことだと思いますけどね。

 

前島 いやいや全然です。お金にも全然ならないですよ。

 

編   その楽曲作成は一人でやったんですよね?

 

前島 そうですね。活動していくうちに広がった知り合いとかから仕事をもらったりはしていましたけれども作るのは一人でやってました。

 

  その仕事をしている時は他にアルバイトとかもしてたんですか?

 

前島 そうですよ、アルバイトしながらです。

 

  なるほど。では音楽の活動をやりつつ生活費はアルバイトで稼いで、そしてしばらくして何か仕事を自分たちでするという構想がお兄さんと始まるんですね。

 

前島 そういうことです。

 

  おもしろいですね。そうやって、ようやくと言うか今はお店を持つことができたんだと思いますけど、今のところ構想通りうまくいっていますよね?いつも混んでいてなかなか入れない店っていう話も聞きましたよ。

 

前島 そうですね、そこはすごいありがたいんですけど。やっぱり何に関してもそうなんですが、うまくいってるように見えてもやってていろいろ問題とかも出てきてはいるんですよ。

 

編   今一番の課題は何ですか?

 

前島 人の活かし方ですね。 今は僕と兄貴と、あともう1人雇っていて後は臨時でアルバイトを頼んだり手伝ってもらったりしている感じなんですけれども、今後株式会社にしようかと思っていて。そうすると雇っている1人を含めて、社員が1店舗に3人もいるなんてなかなか聞かないじゃないですか、なのでその「人」をどうやって活かしていくかで悩んでいます。

 

  なるほど、今後を考えると人はもちろん必要だと思うんですが、今は自分を含めた従業員全てを上手く使い切れていない感じなんですね。

 

前島 なので今考えているのは、今は週1回定休日があるんですけれども人を上手く回して休みはとりつつ営業日を増やそうかというのは考えています。

 

編  確かにそれはいいかもしれないですね。年齢的に若い人間だけで経営しているお店になりますが、良くも悪くもまわりからアドバイスをもらったり、時には口うるさく何か言われたりとかはしませんでしたか?

 

前島 なくはないですが、それはあくまでひとつの情報なので。決めるのは自分たちで決めないといけないので全然問題はないですよ。 言われたらまず有り難く聞いています。

 

  なるほど。ではほんとに当面の課題は人の動きということですね。

 

前島 そうですね、でも絶対人件費を減らすとかそういうふうに考えてはいけないと思っているので、今考えているのは店を増やすという案。さっき言った営業日数もそうなんですけれども、店舗そのものを増やすというのも1つの手だなというのは考えています。

 

編  1つの店に入れるお客さんの数には限りがありますし、そもそも今はもうマックスに近いぐらい入っていますからね。

 

前島 今のお店にもっとお客さんを呼ぼうとは全く思っていませんね。今考えているのは、同じエリア内に別の形態の飲食店を出そうかとは考えています。同じエリアというのも理由があって、今の店は最初の数か月はやはり人が入らなくて大変でしたが、今はもうお陰様でかなり認知いただいているので僕らがもう1店出すというだけで、別に焼き鳥じゃなくてもスタートはしやすくなると思ってます。

 

編  既に知名度がある状態からスタートできるというアドバンテージを活かしたいわけですね。 同じエリアというのは?

 

前島 今、店は新井薬師前駅なんですけれども、もし1店舗焼き鳥屋を出すんだったら少し離れた場所に出します。でも食材が全然違うんであれば近くにあってもおかしくないと思いますので、それだけですね。

 

  まぁたしかに別の形態のお店だったら近くにあって同じ人が経営していても違和感ないですね。最終的に地元に店を出したりだとか、どんどん広げていきたいみたいな考えはあるんですか?

 

前島 今のところないですね。そもそもどんどん店を増やしていこうというよりは少しずつ少数精鋭で行きたいなっていうのが考えです。たくさんお店を出したいとは別に思いません。

 

  なるほど。ではそういった2年間の経験を踏まえて、焼き鳥屋をやってて一番大変なこと、例えば目の前にこれから焼き鳥屋をやろうとしてる人が相談してきたとして、これだけはやった方がいいよみたいな事ってありますか?

 

前島 そうですね。焼き鳥ってとりあえず手が離せない商売ですからそこは考えた方がいいですね。具体的に言うと多少店によって強火で焼く弱火で焼くなどさはあるんですけど、僕のところは強火で焼いてるんですが焼いている僕は全く手が離せないですから。少し何か他のことなんかしてたら料理が焦げてしまうんで。ということはそのぶん必ず人件費はかかるんですよ。その辺は踏まえて体制を考えたほうがいいですね。

 

  それは最初から、それとも商売始めてから気づいたんですか?

 

前島 始めてから実感しましたね。他の業種もそうかもしれないですけど、特にだと思うんですよ。焼き鳥って別に店が空いててオーダーが1本だけであっても、それでもその場所は離れられないですよ。だから混んでいるかとか関係なく他に必ず人が必要になります。

 

編  混み具合によって人数が、というよりはもうその焼いてる人は融通が利かないってことですね。

 

前島 そうですね。絶対離れられないです。

 

編  仕込みとか仕入れに関してはどうですか?最初の方は思ったより仕込みにめちゃくちゃ時間がかかって大変だって言ってたと思いますけど。

 

前島 僕らは別にどこかで修行したわけではないので最初、串刺しがめちゃくちゃ大変でした。今も大変なんですけどね。だから自分たちは仕込みの時間をいかに楽しくするかを毎日考えながらやってます。インスタにふざけた動画をあげたりとか、そういうのをその時間にやってたり。仕込みの時間自体を短縮は絶対無理ですからね。

 

  経営面でも何かありますか?

 

前島 気を使うのは、やっぱり煙ですかね。排煙に関しては最初にかなりきっちりやっておかないと周りに迷惑もありますし、それこそクレームとかきてしまったら工事のやり直しですからね。ここは最初にやっておかないと駄目ですね。

 

編  今の店は具体的にどういうふうに対応したんですか?

 

前島 自分たちが今やってる店は3階建てのビルなんですけれども、最初の工事の時に1階の煙を3階にそのまま逃すような仕組みというのは作りました。

 

編  自分たちでやったんですか?

 

前島 そうですよ。全部自分たちでやりました。ダクトも作って。ガス関係以外は、ですけどね笑。

 

  ガスを自分たちでやりましたって言われると答えに困りますね。

 

前島 気体ですからね、目に見えないものは無理です。

 

  そういうことを言ってるんではないんですけどね。

前島秀寿 鳥テル

多くの友人にも手伝ってもらいながら

前島 あとは経営に関してで言うと、ひたすらリサーチですね。他の業種でもそうだと思うんですけど、自分たちで流行ってる店と流行っていない店両方色々行くべきですね。

 

編  ダメな店も見ておけってことですね。

 

前島 そうですね。なんで流行っていないかも自分たちで見ておいた方がいいです。

内装に関しては色々な店の椅子の高さだとか机の幅、机と椅子の高さの差とかそういうのも全て参考にしました。テーブルの分厚さとかもそうですね。

 

編  それは何か流行る理由がそこにあるとわかってて参考にしたんですか?それとも流行ってるところとりあえず真似してみたんですか?

 

前島 はっきりと流行る理由を伝えるのはちょっと難しいんですけど、結構いろんなところを見ていると不思議なことに流行ってる店はその辺の要素が共通していることが多いんですよ 。

 

  なるほど。ではそういう共通している部分を探し出して、自分たちで結論を出してそれを取り入れて言ったというわけですね。

 

前島 そうですね。やっぱり何か理由はあるみたいできちんとした設備だったら机の足に自分の足が当たって邪魔になることがなかったり、逆に適当に構えた店だとそういった足の部分が狭くてなんだか居心地が悪い長く座ってられないだとか、そういう些細なことも影響しているみたいです。バレないように一瞬メジャーを出してパッと測ったりとかしてました笑。

 

編  店によっては長時間座りにくいようにしておいてお客さんの回転を速くするとかっていうのも聞いたことがあります。

 

前島 でもそれは全部店を出す場所とかにもよると思うので。例えばうちの店だったりすると、新井薬師前という駅なのでバンバンお客さんを回転させるみたいな店は絶対ダメだと思うんですよ。居心地が良くないと。新宿とか渋谷とかだったらはっきり言って回転をさせるような店じゃないと売り上げが上がらないんでしょうけれども、それは場所によりますね。例えばうちの駅の近くに立ち飲み屋とかを作っても流行らないかもしれないですしね。

 

編  なるほど。そこに関しては「これがいい」だとか「悪い」だとかそういった簡単なものじゃなさそうですね。そういう注意するべきこととか、他にも苦労とかはあるとは思いますが、ぶっちゃけ、焼き鳥屋はおいしい商売ですか?売上とか能力とか全部込みでです。

 

前島 うーんそうですね。。。思ってたより焼き鳥って難しいって思いますね。

 

編  なるほど。毎日焼いてて飽きてきたとかそういうのもありますか?

 

前島 それはないですけど、仕込みは面倒ですね笑。

 

編  仕込みは毎日毎日同じことをしてるとわけですしやっぱり辛いんですね。機械にしたいぐらいですかね。

 

前島 まぁ、大変なんですけどでも誰かにやらせるとか機械にするとか、そういうわけにはいかないですからね。手でやらないといけない部分がかなり大きいですから。さらにその仕込んできた材料の中にも、「これは相当美味しそうモモの部分だなぁ」とか、そういう判断もしながら突然限定メニューを出したり、臨機応変にやってるので面倒でも仕込みはしっかりやるしかないです。そういうのは自分で串刺ししてないと絶対わからないですからね。

 

編  確かにそこを短縮してしまうとちょっとなんか違う気もしますね。最初から最後まで全部人が作業して、肉の状態を見てやってるからあのクオリティーが出せてるんだっていうのもあるでしょうから 。

さっきの焼き鳥屋っておいしい商売かどうかの話はなかなか答えることが難しそうですけど、もし誰かが商売したいと言っていたら焼き鳥屋はおすすめの仕事ではありますか?

 

前島 そうですね、おすすめはしますけど始める時に絶対お金はかけちゃダメですね。

焼き鳥屋は本当に失敗して借金だけ残るケースがめちゃくちゃ多いみたいです。

あと、もしそういうやりたいっていう人がいるときに僕が何か一言言うのであれば一人で回せる店を考えて出した方がいいと思いますよ。多くても2人。ベストは夫婦とかなんですけどね。さっき言った通り焼く人はつきっきりになるのでそこは考えて店を作って行った方が絶対いいですね。

 

編  なるほど。ここからはちょっとお金の話なんですけれども、そもそもお金が稼げる方法として飲食店その中でも焼き鳥屋を選んだ、と言ってましたが元々お金を稼いで何がしたかったんですか?

 

前島 稼ぎたかったのはですね、貧乏が長かったからです笑。

 

編  それは実家出てからずっと貧乏だったってことですか?

 

前島 そうです、音楽やっているときもずっとですね。こんな暮らしは嫌だっていう感じでした。そういう思いが長年強かったので、まず稼ぎたいなと思うようになりました。

 

  貧乏じゃないっていうのは具体的にどれぐらい稼げたらっていうことですか。

 

前島 何かしたいことがあった時にすぐできる状態ですね。

 

編  したいことのレベルによるような気がしますが。

 

前島 例えば、「安くて美味しいお店を見つけたから行こう」と友達に誘われた時に、お金がないから実は外食なんて参加できないので「また今度にしよう」って断らないといけない、そういうのが嫌だとかそれぐらいですよ。

 

  それが惨めで嫌ですか?

 

前島 いや、惨めとかとは違いますよ、そうは思わないですけど。 食事で例えたらちょっと贅沢な感じがしてしまいましたがそういうことではなくて、まぁ実際あった話だと身内がちょっと倒れた時に駆けつけようとしたら交通費がないとか、そういうことを味わって切り詰めた貧乏はもう絶対やだと思いました。

 

編  必要最低限のお金が出せないのが嫌だって言うことですね。

 

前島 そうです。例えば結婚式でも祝儀が痛いとかそういう感じです。

 

編  でもそれぐらいだったら普通に就職しても確保できそうな気がしますけどね、みんな大体そうでしょうし。

 

前島 何かお金の話ばっかりになってきてませんか大丈夫ですか笑。

 

編  いやいや大事ですよお金の話。

 

前島 そうですね笑。まあ確かに就職してもそれぐらいは何とかなるのかもしれないんですけど選択肢になかったですね。

 

  さっきの話で言うと、みんなお金は欲しいと思うんですよ。それでお金を稼ごうと思った時にとる選択肢がいくつかあると思うんですけど、例えば前島さんみたいに自分で一から何かやろうっていう人もいるけど、でも大半の人は大きい会社に入っていい収入を手に入れようって思うと思うんですよ。

 

前島 うんそうですね。でもそれだとやりたいことと言うか自分の考えで動けないじゃないですか。あと、はっきり言えば上からポンポンポンポン何か指示されて、言われてるからやるって言うのが好きじゃないですね。

 

  なるほど。

 

前島 行動の決定権が自分にないのは嫌です。

 

編  ただそういう大きい会社だとかは安定しているっていうメリットもあるじゃないですか。そこには興味がないですか。

 

前島 ないですね。何につけてもそうなんですけど、どっちが楽しいかなって考えた時にやっぱり自分で動ける、自分で決定できるっていうのは楽しいですよ。失敗しても自分で責任が取れますし。

 

編  ハイリスクハイリターンってやつですか。

 

前島 そうなんですかね笑。

 

編  ちなみに今は逆に前島さん自身が雇う側になってみてどうですか? 今までも経験ないと思うんですけれども。

 

前島 やはりやってみて人を雇う難しさというのはありますよ。それは相手が、というより僕が悪い部分も結構ありますね。何かしら指示を与えたり注意する時に厳しく言った方がいいのか、厳しく言ってはだめかなとか。

 

  例えば?

 

前島 直接接客とかそういう部分ではないんですけど、例えば従業員同士のコミュニケーションの部分とかで何かやってもらった時とか、何も言わない人間がいたらそこは相手に向かってちゃんとお礼とか言おうよとか言うこととかありますね。でもそれも難しいですね言い方が。

 

編  接客とか仕事に関してのミスとかではなくそういう部分を指摘するっていうのはかなり優しいと思いますよ。

 

前島 どうなんでしょう、それは俺がおせっかいみたいなところがあるかもしれないので何とも言えないんですけど笑 。

 

編  いろいろそういった悩みとかももちろんあるとは思いますが、自分自身で物事を進めていって昔よりはだいぶ収入と言うか他の部分も満足がいく感じになってきてますか?

 

前島 そうですね。でも今は自分への収入/給料は最低限生活ができる程度にして贅沢はしていません。なぜかと言うとまだまだ、例えば店舗を出すとか、他に将来やりたいことがあるので。だから全部満足いっているというのとはちょっと違いますね。

 

編  なるほど。これから先いろいろ広げて行く時のために準備してるんですね。飲食店関係すらずっとやってるかどうか分からない感じですか。

 

前島 はい、それすらずっとやってるかどうかなんて全然わからないです。

 

編  ざっくりでいいんですけど、その新たに店舗を出すとかの他に全体的な今後の展望とかはあるんですか?

 

前島 そうですね、目標としては5店舗ぐらいになったらいいかなとも思います。そっから先はちょっと全然別なんですけれども、地元の観光事業とかをやりたいなと思ってます。

 

  それは前から思ってたことですか?

 

前島 ちょうど半年前ぐらいからですかね、思いついたのは。

 

編  やっぱり東京より奄美大島が好きですか?

 

前島 うーん。・・・ここは地元って言わないとまずいですよね笑。

 

編  いいんじゃないですか?僕だって地元最高とか全く思いませんし。

 

前島 そうですね、良さが違うと思います。

 

編  そういえば最近奄美大島はめちゃくちゃテレビでも取り上げられますね。

 

前島 前は成田からLCCで安く帰れたんですけれども、最近は関空からもLCCが出るようになって観光客がすごい増えたみたいですよ。

 

編  外国人っていうことですか?

 

前島 いえ、ほとんど日本人です。

 

編  そうですか、意外でした。外国人の方が多いのかと。海外での知名度も高いらしく、沖縄とか奄美大島の海が一番綺麗だって、外国の方が言うらしいですよ。

奄美大島 

何十メートル先でも底が見えてる・・・

前島 あっちにいた時は当たり前すぎて全然わからなかったですけど、一度外に出てみて自分の地元の自然の美しさとかはすごく実感しました。今だってたまに帰ったりするとそれはものすごく感じます。

 

編  住んでた時よりも今の方が良さがわかるんでしょうね。でもそれだけいいところなのに、前島さんの奄美大島出身の友達ってこっちに出てきてる人がめちゃくちゃ多いですよね?

 

前島 そうですね、結構みんな出てきてます。

 

編  奄美大島の人は大体の人が外に出ていくわけですか?

 

前島 そうですね、だいたいは東京大阪福岡に出て行って、でも最終的に戻る人が多いんですよ。

 

編  あぁ、なるほど、最終的に戻るというのですごく納得です。逆にそもそも全く島の外に出ないみたいな人っているんですか?

 

前島 いますいます。

 

編  そういう人は地元でどういうことをしてるんですか?

 

前島 僕の周りいるのは地元でダイビングを教えたりだとか。

 

編  なるほど。でも働き口を考えると明らかに数は少ないと思うんですけど。

 

前島 少ないですよ。大体みんな観光業になりますね。

 

編  みんな働き口があって残ってるというわけであって、残って何か探してるって言うのとは違うんですね。

 

前島 ほとんどそうだと思いますよ。

 

編  さらに奄美大島の人って外に出ていってもみんなつながってるイメージです。

 

前島 東京で奄美大島出身の人の運動会が年に一回あるんですけど500人ぐらい集まりますよ。

 

編  それはコミュニティがめちゃくちゃ強いですね。でも地元にずっといたらそういうことしないような気がするんですよね。こっちに出てきてるから同郷に価値があると言うか、そんな気もしてるんですがどうですか?

 

前島 でも他の地域の人が、例えば関西のどこどこ出身っていう話になって共通してても「本当に?!」みたいになってそこまで盛り上がることってあまりなくないですか?

 

編  そうですね、私の場合は別にならないですね。

 

前島 奄美大島の人って結構その後話も弾んで盛り上がるんですよ。そこで考えたんですけど、やっぱり地元が狭いのもあって、地域が一緒であればだいたい共通の知り合いがいるんですよね。知り合いじゃなくても共通の話題が絶対あるんですよ。

 

編  親近感が他のところとはレベルが違うって感じでしょうか。

 

前島 だから外で会ったら「仲間がいた」みたいな感じになるんですよね。

 

  話しかけるときも、奄美大島だっていうことが分かってればもう何か共通の話題はあるだろうという予想も立つんでしょうね。

 

前島 そうです。さらに、例えば外で奄美大島出身の19とか20歳ぐらいの男の子とかに会ったら少し俺が面倒見てあげないといけないな、みたいな感じは僕の中にもありますね。

 

  それはいいですね。東京は治安のせいもあったりして、近所でも挨拶しない方がいいみたいになってますしね。

 

前島 そこは地元というか田舎特有というか、少し特殊かもしれないですね。少し話が戻るんですけど、今店をだしてる新井薬師前っていう駅はコミュニティがめちゃくちゃ狭いので少し奄美大島のアットホームな感じに似てるところはありますね。外に出たら誰かいて、「あ、こんにちは」みたいなことはありますし、実際知り合いにばったり会うみたいなことも全然ありますよ、多いです。

 

  元々新井薬師あたりがそういう地域だってことは知ってたんですか?

 

前島 いえ、全然偶然です。店を出して商売をしてから分かりました。

 

編  でも確かに山手線から外に向けて2、3駅離れた駅ってやたら東京ぽくないと言うか、コミュニティが狭くて田舎の雰囲気が出てる駅ありますよね。居酒屋行ったらいつも同じ人がいて挨拶するみたいな。

 

前島 そうですね、それはありますね。

 

  奄美大島のそういうコミュニティがある状況で育ってきて、東京で店を出した場所もたまたま似たようなふれあいがある地域だったというのは縁かもしれないですね。

そういう地域に店を出せて、アットホームな環境に身を置けたことや、アルバイト時代と違ってある程度稼ぎが落ち着いてきたことで時間や多少なりとも金銭面にも余裕がでてきて、昔よりもやりたいことがやれてるんじゃないですか?

 

前島 そうですね。でも本当にそういうのが一番いいと思うんですよ。ただ生きるためだけに働いているとかそういうのではなくて。基本的に自分は楽しいことばっかりやっていたいので。音楽もまたやりたいですね。落ち着いたらと言うか将来という話ですけど。

 

編  生活に追われたりするのではなく時間とか金銭面とか、何かをしたいときにできる権利はもっておくべきということですね。

 

前島 そうですね 。

 

編  最初に言っていた、とにかくお金を稼ぎたかったというのもそういう状態に身をおきたいというのがあったんでしょうね。結果として今は、前までよりはそういう状態に自分を置くことができてきて少し余裕がでてきたから、観光業とかやりたいことを思いつくようになったんじゃないですか。

 

前島 そうですね、ほんとそうだと思います。

 

編  切羽詰まってる時ってそれどころじゃないですしね。

 

前島 そうなんですよ、お金がない時って本当にイライラもしますし。ちょっとしたことで人と揉めたりとかもしますよ。金持ち喧嘩せずって言うじゃないですか。あれほんとそうだと思いますよ笑。お金持ちほどかどうかは分かんないですけど、お金に余裕がある人ってニコニコしてますからね本当に。喧嘩なんかしないんだろうなぁって思いますよ。

 

編  そうですね、たしかにそうかもしれない。

 

前島 でも間違っちゃいけないのは、そういった余裕っていう意味でお金は絶対必要ではあるんですけど、だからといってガツガツなにがなんでもそれを取りに行くみたいなのは絶対違うと思いますね。やっぱり自分がやりたいこともやって楽しみながらっていうのがものすごい大事だと思ってます。

前島秀寿

節約するために自分たちで店を「楽しみながら」作った

編  それも店を出す前からそういう考えだったんですか、それともやってくうちにですか?

 

前島 やっていくうちにですね。最初はもうそれどころじゃなくて何とかしたくて、どうやったらお金を稼げるのかという話からスタートですよ。でもやっていくうちに大事なのはそれだけじゃないなっていう風に思えるように変わってきました。

たとえばさっき話した、他の店をリサーチするとかも、もちろん今も参考にさせてもらったりしてますけれども、リサーチすること自体も楽しみながらと言うか。全部仕事とかお金のためだとかすると楽しくないですね。

 

  なるほど。

 

前島 あとは、例えば5000円払ってもそれだけ価値があるお店であれば満足できますが、逆に2000円でも払いたくないような店もあるじゃないですか。そういう店は自分がお客さんで行って、安くても楽しめませんよね。さらにこれは実際に行った店なんですけど、めちゃくちゃ美味しい料理を出すのに、投げるように串を皿に置くような所が以前あって、それだといくらおいしくても嫌な感じですよね。僕はそういうとこは二度と行かないです。お客さんは気分良くないと思うし楽しくないので。

そういうこともあって考えたりしていくうちに、目に見える料理や金額以外にも大事なことがあるなと思いましたし、やはり楽しむ、楽しめるって大事だなと思いました。

 

  お金を稼ぐことだけを考えていろいろ試行錯誤して、結果としてお金じゃない部分に目が向いてくるっていうのはおもしろいですね。それも結局は生活に追われるような環境から一旦は卒業できたからこそ、他の部分が大事だと感じることができてきているってことでしょうか。

 

前島 そういうことですね。

前島秀寿 鳥テル

新井薬師前駅 鳥テル

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